第17章

【番外編】アレクサンダー

第三王子リチャードは、いぶかしげに眉をひそめ、目の前で黙々と書類を捌く男を見つめた。

「アレクサンダー、アリス姫はもう一刻も外でお待ちだぞ。本当に会わないつもりか?」

アレクサンダーは顔も上げず、手中の羊皮紙をめくり続けた。

「申し訳ありませんが、本日中にこれらの案件を処理せねばなりません。姫様には、私からお詫びを申し上げておいてください」

リチャードはやれやれと首を振り、議会庁を後にした。

その背中が見えなくなると、アレクサンダーは静かに羽根ペンを置き、こめかみを強く揉んだ。

アリスに会うのが、怖かった。彼女の顔を見るたびに、凪いでいたはず...

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